Rakuten Fintech Conference 2016に行ってきました!
2016年9月28日に開催された
国内外よりFinTechのトップランナーを招き、最先端の現場の状況を知ることで、
FinTechが切り開く未来と日本の姿、そしてそのあり方について探求することを目的とした楽天FinTech Conference 2016に参加してきました!
FinTechという良質なコンテンツな上に、なんと参加料無料ということで、
約2,000人規模の大規模なカンファレンスでした。
今回は、楽天FinTech Conference 2016の内容をまとめてみました。
※メモを元にリライトしていたり、同時通訳がわかりにくいとこがあった為、実際のニュアンスと一部異なっている可能性もあります。筆者の認識という視点でご理解ください。
プログラム
RoomA(鶴の間)
- FinTechが切り開く日本経済
- FinTechイノベーション
- ロボアドバイザリーは資産運用の世界を変えるか?
- データレンディング―資金調達に革命が起きる?
- Leading in Digital
- FinTechで何を如何に規制すべきか
- Big Dataによって変わるFinance, Life, Society
- 総括セッション-FinTech革新が変える日本、世界
RoomB(鳳凰の間)
- Technology Evolutions
- Tencent’s Disruptive Financial Service
- Asian FinTech Innovations
- ブロックチェーンが変える金融機関の姿
- サムライビットコインプレイヤーが切り開く新たな時代
- Money Transfer to the world―より早く、より安く、より便利に
参加プログラムとINDEX
- FinTechが切り開く日本経済
- FinTechイノベーション
- Asian FinTech Innovations
- データレンディング―資金調達に革命が起きる?
- サムライビットコインプレイヤーが切り開く新たな時代
- Money Transfer to the world―より早く、より安く、より便利に
- Big Dataによって変わるFinance, Life, Society
- 総括セッション-FinTech革新が変える日本、世界
FinTechが切り開く日本経済
スピーカー
伊藤 隆敏(コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授)
トップバッターということもあり、FinTechの全体像に関してのセッションでした。
要約
現在までの多くは、メインバンクに金融面での送金、決済、借入れなどを一括で任せている状態だったものの、金融分野でのテクノロジーの導入により、個人ごとの信用(リスク)を計れるようになることで、メインバンクが一括で行っていたことを別の会社が分業して行えるようになってきた。より分業が進むことで今まで、メインバンクがリーチできてなかった分野の開拓が進み、マクロ経済の面では、生産性と成長率の向上が見込める為、FinTechを推進し、新しいサービスを生み続けるべきだという内容でした。
金融効果
- アンバンドリング
送金、決済、借入れなどをそれぞれ別会社で行うようになる - 金融仲介機能不要
貸し手と借り手が直接やり取りするようになる - Techによる情報の非対称性の問題解決
- リスク分散化商品(料率)の精緻化
顧客利用者ひとりひとりの信用(リスク)が計測
個人金融取引が全て記録される(Uberは相互評価)
マクロ経済
- 生産性向上
- 成長率向上
FinTechイノベーション
各パネラーによる各々のサービスベースでの説明・ディスカッションがメインでした。
パネラー
- フレディ・ドミンゲス(ComparaGuru.com 共同創業者)
- アラン・フェリス(Yoyo Wallet 共同創業者兼CEO)
- マーガレット・J・ハーティガン(Marstone 創業者兼CEO)
- リアーン・ケンプ(Everledger 創業者兼CEO)
要約
全体として、共通していたこととしては、
彼らのサービスの差別化要因は、
「テクノロジーの最適化を行うことで、新しいユーザー体験を作り、エンゲージメントモデルを変えること」
その為に、
銀行よりも小売に近づくことで、信用・信頼を作る、または担保する
その信用・信頼(ブランド)は価値提案で作る
価値提案は正しくなされなければならない。
正しくある為にはユーザビリティーが必要。
ということをお話されていました。
起業家へのメッセージ
マーガレット・J・ハーティガン(Marstone 創業者兼CEO)
4つのポイント
- ドライブが必要
サービス、関係者を動かす熱意 - 仕組み立てて対応
一過性のものではなく、再現性のある仕組みを作る - 優先順位
緊急度・重要度の高いものを選ぶ - 危機感
もっと新しいものを作ろうとしている人は、周りにたくさんいると思う
リアーン・ケンプ(Everledger 創業者兼CEO)
- 朝食をちゃんと食べること
- マラソンを短距離走と同じように走らなければならない
ベンチャーは、圧倒的なスピードを維持しつつ事業を展開しないといけない為、それを実現するエネルギーを養わなければならないという意味。
Asian FinTech Innovations
何故、FinTechなのか?という質問を中心に各国の状況を踏まえ、ディスカッションを展開。
パネラー
内容
何故、FinTechなのか?
ダニエル・ト(中国平安グループ グループチーフイノベーションオフィサー)
もともと、損保事業から始まった為、Financial Sheetの拡大として、FinTechに参入。
中国の成長と共に成長できており、うまく波に乗れた為、今後もFinTechを通じた拡大路線。
サティエン・コサリ(Cube 創業者兼CEO)
インドは急速な成長と共にカオスな状況にあり、資産管理がままならない状況。
FinTechを通じて、個人の生活の質向上に貢献できるサービスを提供する為。
林 良太(Finatext 代表取締役)
日本のマーケットは、世界的に見ると極めて特殊なマーケットな為、日本と同じやり方では、他で成功することが難しい。そこで、FinTechを通じて、金融に関する豊富な知識・経験を基盤に、それを誰にでも分かりやすいUI/UXに落とし込むことで、日本のユニークさを輸出していく為。
要約
中国、インド、日本共に異なる経済環境ではあるものの、それぞれの経済フェーズ・マーケットで抱える課題への解決のアプローチの一環として、FinTechが一助を担ってるようでした。
先進国だから、発展途上国だから使える、使えないテクノロジーというわけではなく、どのようなサービスを形作るかで応用の利くテクノロジーという印象をアジアの現状から受けました。
データレンディング―資金調達に革命が起きる?
パネラー
- アレクサンダー・グラウブナー=ミュラー(Kreditech 創業者兼CEO)
- ポール・グ(Upstart 共同創業者)
- ジェームス・グティエレス(Insikt CEO兼共同創業者(Oportun創業者))
- 勇 浩一郎(楽天カード株式会社 執行役員兼事業ローン推進部長)
- アレクサンダー・グラウブナー=ミュラー(Kreditech 創業者兼CEO)
内容
アレクサンダー・グラウブナー=ミュラー(Kreditech 創業者兼CEO)
ターゲット層は、十分に融資を受けれてない人。
「Ability to repay」と「Willingness to repay」という指標を
データと機械学習による統計に基づき、格付けすることで、十分に融資を受けれてない人へ独自の与信審査でリーチ。
グローバルかつ24時間の貸し出しが可能。
勇 浩一郎(楽天カード株式会社 執行役員兼事業ローン推進部長)
楽天市場出店店舗向けローンの楽天スーパービジネスローンのサービスにて、FinTech型の融資。
ポイントは、
① ビッグデータに基づいて顧客ごとの融資情報を算出(金額・料率)
② 翌日貸付
③ 市場出店店舗の売上から支払い可能
ビッグデータを活用することで独自の与信審査を可能にし、書類準備の手間と時間を削減。
ジェームス・グティエレス(Insikt CEO兼共同創業者(Oportun創業者))
小額ローンのレンダー
アメリカではクレジットスコアがない為に銀行サービスを受けれない、かつ
数百ドル程度貸し出し希望の低所得者層をターゲット。
与信審査にビックデータを活用。
要約
スタートアップがレンディングの業界に与えているインパクトとして、
銀行の能力・関心の欠如により、銀行の中で焦点を当ててない部分をビックデータテクノロジーによって解決してるということ。
特にアメリカでは、リーマンショック以降、規制が変わり、与信が厳しく、銀行は低所得者へローンできない為、ベンチャーにできる分野になりつつあるよう。
テクノロジーを活用して、効率的な与信を実現しているFinTechスタートアップの姿が見えました。
サムライビットコインプレイヤーが切り開く新たな時代
ビットコインという注目度の高いコンテンツの為、会場が満員になるほど参加者の熱の高いトピックでした。
法律制定の影響からビットコインの今後展望までが各事業者に語られたパートだったので、詳しく記載しておきます。
パネラー
- 加納 裕三(Bitflyer 代表取締役/日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事)
- 栢森 加里矢(Quoine 代表取締役)
- 和田 晃一良(レジュプレス株式会社CEO兼最高技術責任者(兼:日本ブロックチェーン協会(JBA)監事))
内容
改正資金決済法が可決・成立した影響は?
改正資金決済法が可決・成立に伴い、仮想通貨が「支払い手段であり、通貨ではない」と定義されました。
今まで、グレーだった部分が明確になった一方で、法律が整った為に、KYCや金融庁の対応などのコストも発生し、小さいベンチャーがビットコインビジネスに参入しにくくなるという懸念はある。
流通量が少ない、その課題は?
ビットコインを買ったとして、何に使うのか?という問題が解決できていない。
課題解決に向けて、ユースケース(使い方)を事業者が提供して、ユーザーの受け入れ態勢を整える必要がある。
ひとつのユースケースの例として、coincheckでんき(http://denki.coincheck.com/)の例。
公共料金(この場合は電気代)の支払いの背景としては、電力の自由化に伴う差別化として、電力会社からの相談がきっかけ。通常の支払いで、電気代の4~6%をビットコイン還元するプランとビットコインの支払いで4~6%値引きするプランでサービス提供予定。
どこで使えるようになれば普及するのか?
キャッシュレスな支払いが多い楽天やAmazonなどの大手Eコマースサイトが導入すれば、普及していくと思われる。
一方で、マウントゴックスの事件で、あやしいものという認識は残っているので、信用・信頼の啓蒙活動をしていく必要はある。
また、ネットワークビジネスなどで仮想通貨のあやしい売り込みや詐欺コインといったものもあるので、情報開示により安全なコインを示す必要がある。
要約
よくも悪くもマウントゴックスの事件で、ビットコインという言葉自体は誰もが知るワードとなっているが、
未だ一部の投資家の投資目的での利用がメインで、社会のインフラとしての機能を果たせていないのが現状。法律の制定により、ベンチャーの参入障壁は上がっているが、ビットコインの普及には、ビットコインサービスが増えることが不可欠である為、今後のビットコインを使うサービスの出現に期待したい。
Money Transfer to the world―より早く、より安く、より便利に
かなり詳細な話が大半を占めたので、ここは要旨のみ。
パネラー
- スコット・ガリット(Payoneer CEO)
- マイケル・ケント(Azimo 創業者兼CEO)
- マイケル・レイブン(Currencycloud CEO)
要旨
送金ビジネスは全世界で約7,000億ドルの市場規模であり、そのほとんどが先進国から発展途上国への送金。
送金の際の平均手数料が約8%と高額な為、ここに手数料節約の機会があり、節約分を更に発展途上国に送るなどの応用も考えられる。
Big Dataによって変わるFinance, Life, Society
このパートに関しては、ビックデータを通じた幅広い範囲での影響のディスカッションでしたが、ほとんどFinanceが占めてました。
パネラー
- ホセ・ガルシア モレノ=トレス(Kreditech, CDO)
- 森 正弥(楽天株式会社執行役員兼楽天技術研究所代表/公益社団法人 企業情報化協会(IT協会)常任幹事)
- 佐藤 航陽(株式会社メタップス 代表取締役CEO)
内容
ビッグデータにより、今後のパーソナルファイナスが変わるのか?
要するに、どういったデータが個人の信用を作るのに役立つのか?お金を借りやすくなるのか?という質問に対する回答。
友達何人いるか?何をつぶやいたか?というソーシャルデータ、オープンデータは個人の信用形成に繋がらない。
個人の信用に役に立つデータは、公共料金、携帯代金などの生活に必須なデータ。
また、人は生活するだけ多くのデータを生成しており、GPSデータを活用することで、ジムに何回いくか、パチンコにいくか、何時に家に帰るのかなどのどういう振る舞いをしているのかのデータも今後は役に立ってくる。
GPSデータを活用する際のポイントは
- 自宅の場所
- 勤務地
- 現在地
この3視点で同じ所得でも2時間かけて通勤する人、ナイトエリアに住む人などのライフスタイルから役立つデータを生成できる。
ただ、GPSのような位置情報データはソーシャルデータのように嘘をつくのは難しい一方で、Googleとかでない限り、購入データのように簡単に手に入るデータではない為、ハードルが高い。そして、GPSデータ分析にかかるコストに対してのリターンのROIの問題もある。
決算書でどんな情報を開示すれば、投資家たちに役に立つのか?
FacebookはKPIのひとつとしてDAUを掲げており、WhatsAppを約1600万ドルの収益なのに、約220億円で買収。従来の投資のモデルに当てはまらず、融資に比べると、投資のパターンの優位性はない。
その為、インターネットのデータサイエンティストのノウハウをFinTechに持ち込んで投資するってのは今後ありうる。データと金融商品はまだ繋がってないおらず、本当の価値、見えてない価値を図るのには今後必要になってくる。
GPSのビッグデータ活用で人々のステレオタイプを排除できるのか? 何があやしくて、あやしくないかの暗黙の了解の価値観、倫理的な問題
質疑応答でのおもしろい質問の紹介。
データポイントを何千も与えて、債務不履行の可能性を反映。
その場所に何時間いるのか?そして、それが何時から何時までなのか?
その場所のあやしさではなく、データから全体像を見る。
ランダムか、定期的に訪れるかなど。
いろんな分析をすることで、意味のないものとあるものを仕分けしていくことが大事。
DeepLearningは人の偏見と仮説を破っていくはず。
要約
ビックデータを活用し、より多くの分析をこなしていくことで、情報の仕分けができ、社会に対してお金で見れないものが見れるという文化的・社会的投資の価値が可視化されるというのは非常におもしろい視点だと思った。
総括セッション-FinTech革新が変える日本、世界
FinTechというテーマと三木谷氏の経歴を踏まえると、銀行関係のファイナンスがメインの話になると思ってましたが、ほとんどブロックチェーンとデジタル通貨の話で、注目度の高さを認識しました。
また、ブロックチェーンやデジタル通貨の話を通じて、日本の問題に両者触れていく特長的なセッションでした。
パネラー
伊藤 穰一(MITメディアラボ 所長)
三木谷 浩史(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)
内容
FinTech周りで世界で何が起きてるのか?
伊藤 穰一(MITメディアラボ 所長)
現在のFinTechは過去のサイバーキャッシュ、デジキャッシュの流れに継ぐ、ビットコインが作り出した流れ
第二次FinTechブーム。
今後、ビットコインが進化して、グローバルなブロックチェーンのインフラになる。または、新しいコミュニティになると考えるが、現在はインフラのないまま、話題と投資が先行し、サービスが乱立している状態。
土台のないところに大きな城を建てようとしているのが懸念。あとは、銀行が強い分野では、イノベーションが起きにくい。
貨幣の機能は、
- 信用担保
- 交換
- 匿名性がある
この機能があれば、国家の通貨がデジタル通貨に代替される可能性はある。
というのも、流通コストが安いから。
これは楽天市場の時の仮説と同じで、
楽天市場はリアルの取引をインターネットで行うことで、従来の30%安く商品を販売できるという仮説であり、仮想通貨に関しても同じ。
「いくらダムを作っても、水は低い方に流れる」というのが三木谷氏の哲学。
日本はインターネットで何故遅れをとったのかを考える必要があり、
それは各種規制のせい。
インターネット、IoTで世界に遅れをとるだけでなく、
このままだとFinTechでも遅れをとってしまう。
日本の問題
問題①
日本の会社は、縦割りの組織(営業と開発が別)が一般的。
組織が縦割りだと、ビジネス側はパッケージで動く為、新しいものが生まれない。
ビジネスと開発を混ぜることで、新しい物は生まれてくる。
Ex)レゴのパッケージ
何を作るかは決まっていて、組み立てるだけ
と伊藤氏は言及。
また、現状、ブロックチェーンやAIなどを始めとする技術では世界に遅れをとっているが、根っこの技術で闘うのではなく、サービスで闘うべき。
高校生のポケベル利用からテキストメッセージが生まれたりと、新しいプロダクトの目は日本にあり、コンシューマー向けのアプリケーションは日本が一番。
問題②
国際会議などの海外のコアコミュニティに日本人がいないこと。
技術力のある人間をアメリカに送り込んで、ビットコインやブロックチェーンのコアの技術を日本に持ち帰らせ、技術を語れる人間を増やしていく必要がる。
とも伊藤氏は語っておられました。
要約
FinTech、特にビットコインやブロックチェーンの分野では、
国の規制が新しいものを枠組みに当てはめようとし、新しいものの為に変わろうとしてないことが大きな問題である一方、海外のコアコミュニティに参加する日本人がいない為に、国内の技術力が海外に追いついてないことも大きな問題というのが伝わってきました。三木谷氏・伊藤氏共に、会社単位の問題として捉えず、これからの日本の発展に向けたロビー活動・環境作りをしているという面が非常に興味深いとこでした。